SILK

収録曲

1.東京タワーを消せるなら
2.幻とダンス
3.アドレスのない手紙
4.Desperate
5.さよならよりもつらい別れ
6.28℃~素顔のままで~
7.月の舟
8.Stony Rain
9.風の風景
10.Dear Friend

テイチク/コンチネンタル

コメント

あの頃は、まだLPというものがあって、それを偲ばせるような曲順になっている。ためしにカセットテープ(これもそろそろすたれ始めてきてるかな?)に1~5と6~10を片面づつ録音して聞いてみるとその意味がより明確になる。どちらから聴いても物語がある。・・・と、まあ、若気の至りというか、曲順などあまり意味をなさない今、好きな曲だけを好きな順番で聴いてもらっても一向にかまわないのだけど・・・。

1、は珍しいワン・ハーフの構成。1・1/2でしかない長さ。雨の夜、伊勢正三さんが実際に見たという半分だけの東京タワー。心模様と街のざわめきのようなベースライン。雨の雫の調べのようなピアノ。美しい。

2、は僕にとっては(最近では)ユーモラスに感じる曲。“田原俊彦”調(そんな気がしない?)で、「押し問答ー」のところは妙な変さがある。

3、は佳作。こういう曲は大好きなんですよ。残念なことに、意外に人気無し。トホホ・・・。

4、ラテンのリズムを取り入れた熱い楽曲。中西圭三くんのハーモニーが光る。これをハモれる男性ボーカリストがほとんどいないのでライヴで出来る気がしない。

5、松井五郎さんの歌詞はなんとなく実体がないというか、イメージ的というか、その割に悲しみとか切なさは実によく伝わる。その代表的な作品だと思う。素晴らしく緊張感がある。

6、疾走感。爽快。

7、名曲。僕のレパートリーの中で、歌うのが最も難しい曲の一つ。こういう覚えやすく歌いやすそうな曲ほど大変。誰もが歌えそうな曲だからこそ難解にならず、且つ高い表現をしなくてはならない。そんな講釈はいらないぐらい、良い曲だな。

8、はカッコイイ。僕の楽曲は解かり易さと難解なものの振れ幅が大きい。とにかく良けりゃ何でもありなのだけど、吉田美奈子さんの歌詞が異彩を放ってくれたおかげで、そこに強さも加わった感じだ。何せ“石の雨”なのだから。

9、これも3、と同じ理由で大好きな曲。地味だけどこんなナンバーばかりのライヴってのもやってみたいね。

10、名曲です。今この歳になってもう一度レコーディングしてみたい曲の一つ。この寂しさは深い。

この時、僕は何かを待っていたような気がする。何を待っていたのだろう。このアルバムを聴くたびにそんな切望感(?)のような渇きを思う。素晴らしい楽曲と変わりゆく環境。5年後ぐらいの音楽世界を見ようとしていたのかもしれない。